【活動レポート】お好み焼きは世界を救えるか——ウガンダ×サモア「食」で挑む社会課題解決の現場

2026年6月7日(日)、東京・水道橋にて、試食会トークイベント「ウガンダ×サモア 食の常識をひっくり返す『粉もん』大実験!」を開催しました。ウガンダで活動するMampuku Uganda LTD.と共同で開催した本イベントは、アフリカと南太平洋、二つの異なる国の「食」を入り口に、社会課題の解決を美味しく・楽しく・真剣に考える一日となりました。

「カンパラ焼き」が生まれた理由——食で社会課題に挑む
登壇者のひとり、Mampuku Uganda LTD. CEOの谷川うりさんは、アフリカ・ウガンダの首都カンパラのスラムで、シングルマザーたちの経済的自立を支援するため、現地食材を使ったウガンダ風お好み焼き「カンパラ焼き」を考案しました。
カンパラのスラムには、夫を亡くしたり離別したりして、ひとりで子どもを育てるシングルマザーが数多く暮らしています。ウガンダは失業率が高く、誰もが安定した職に就くことは困難です。とくにシングルマザーの彼女たちは学歴や学力が十分でないこともあり、その日の食事にも事欠く家庭が少なくありません。母親が十分な収入を得られないために、子どもを学校へ通わせられない、教育を十分に受けられない子どもが定職につくことができない—このような貧困が次の世代へと連鎖していく構造が、大きな課題となっています。
この状況に対して谷川さんが生み出したのが「カンパラ焼き」というビジネスモデルです。ウガンダでは、多くの人々が道端で屋台の飲食店を個人で経営しており、なかでも代表的なローカルフードである「ロレックス(小麦粉のクレープ)」を販売している店が多いです。しかし、このロレックスは輸入小麦に依存しており、昨今の価格高騰によって原価率も80%を超え、どれだけ作っても利益が出にくい構造になっています。そこで現地で安く手に入る白トウモロコシ粉やキャッサバ粉を変わりに使用することで高い利益率を確保し、働くシングルマザーたちに安定的に給与を支払える「支援に頼らない持続可能なビジネス」を実現しました。母親たちが安定した収入を得ることで、子どもを学校へ通わせられるようになる。カンパラ焼きは、貧困の連鎖を断ち切る一歩となっているのです。

(引用:https://camp-fire.jp/projects/947524/)
さらにこのカンパラ焼きは、作り手だけでなく食べる人の課題も解決します。ウガンダでは野菜が豊富に生産されているにもかかわらず、調理方法が知られていないために十分に食べられず、栄養不足に陥る人が少なくありません。一方で、キャベツなどの野菜を大量に摂れるカンパラ焼きは、安くて美味しく、栄養バランスを整えられる一皿です。しかも、インフラが整っていない環境でも、少ない水と鉄板1枚で調理できます。さらには、オタフクソース株式会社の技術協力を受けて開発した特製ソースによって、ウガンダ人の口に合う味付けを実現することに成功しました。カンパラ焼きは、まさに作り手の貧困と、食べる人の栄養課題、その両方のニーズにに応える一皿となったのです。
サモアの食の危機——「美味しい」が届けられるか
もうひとりの登壇者であるルマナイサモアの板垣は、JICA海外協力隊を経てルマナイサモアの設立当時から、サモアでの教育支援に長年携わってきました。そんな板垣が現在注目しているのがサモアの生活習慣病の問題です。
現在サモアでは、食の欧米化による糖尿病のまん延が大きな社会課題となっています。野菜をあまり食べず、ファストフードを好む人々に「健康のために」という正論はなかなか届きません。そこでふたりが意気投合したのが「カンパラ焼きのような、サモアの食材でお好み焼きで解決できないか?」というアイデアでした。
ウガンダで培った「食で社会課題を解決する」知見を、今度はサモアへーという挑戦です。
イベント当日は実際にサモアの食材を使ったお好み焼きの調理と試食が行われ、会場は「本当に作れた!」「サモア焼きも美味しい!」といった声が飛び交い、社会課題の解決法をみんなで楽しく考える時間となりました。


「おいしい!」が雇用と教育を生む——新しい国際協力のカタチ
クロストークのセッションでは「お好み焼きは世界を救えるか」をテーマに、食をビジネスと文化に変えることで社会課題を突破する可能性について議論されました。
中でも印象的だったのは、ウガンダが抱える「ねじれた健康課題」への向き合い方です。ウガンダでは、貧困層が栄養不足に苦しむ一方で、富裕層は肥満や糖尿病といった生活習慣病を患うという、相反する課題が同時に存在しています。カンパラ焼きは、安く栄養を摂れる食として貧困層の栄養改善に貢献するだけでなく、しっかりと利益率を確保できるよう設計されている点が大きな特徴です。
富裕層に向けて販売して利益を生み出し、その利益をスラムで働くシングルマザーたちの給与として還元する。そしてその給与によって、母親たちは子どもを学校へ通わせることができる。「美味しい」という体験が、栄養改善にとどまらず、雇用と教育の機会までも生み出していく。この一連の仕組みは、これまでの「支援する/される」という国際協力の常識をひっくり返すものでした。
イベント終了後の交流会では、参加者同士でそれぞれの気づきや感想を共有し合い、最後まであたたかく充実した時間となりました。
世界を変える挑戦は、一枚の鉄板と、ひとりの情熱から始まっていました。国際協力は、思っていたよりもずっと身近なところにあるのかもしれない。今回のイベントは、そう実感できる機会となりました。ルマナイサモアは、これからも「食」を通じた新しい国際協力の可能性を、皆さんと一緒に探っていきます。

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